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2.転職市場動向
経理・財務・人事・総務・法務…etc 事務系スペシャリストの転職市場動向2007-2008

2007年問題、高齢法や雇用対策法の改正などの影響で、にわかにクローズアップされている中高年の雇用問題。実際に転職市場では何らかの動きはあるのだろうか。数多くの中高年の転職を支援してきた人材バンクのコンサルタントに実情をうかがった。


イラスト
目立った求人数の増加は認められない

 
───ここ最近、中高年の求人数は増加傾向にありますか?
柿本

現在は雇用対策法改正で、求人情報の中に上限の年齢を明示できなくなってしまったので、中高年の本当の求人数は分からなくなっています。しかし、元々40代以上の求人は多くはありません。特にここ1年間で中高年の求人が増加しているという感じは受けていません。

そもそも中高年の転職の場合、求人数の増減や求人倍率等はあまり関係ないと思っています。企業側の要望にうまくはまる人ならいくつになっても転職はできます。それに45歳以上の求人は作るものだとも思っています。これまでの例で、企業側の年齢条件は35歳までだったのですが、よくヒアリングして採用目的とほしい人材像を把握した上で、ぴったりだと思う人を紹介しました。年齢は67歳だったのですが、「こういう目的でこういう雇用形態にすればこの人がぴったりだ」と提案したところ、すんなり採用になりました。もちろん企業側も求職者側も大喜びで、今でも元気に働いています。こういう例はいくつもあります。

ただ企業の求人要件に合う人をいわれるがままに探して紹介するだけじゃなくて、両者が幸せになれる求人を作り出すこともできるわけです。

───社会の景気の良し悪しもあまり影響しない?
柿本

中高年の転職の場合は、長い年月をかけて身につけた知識やスキルが必要なのであって、景気の動向は関係ないと思います。景気が良くなったからといって、若年層のように求人数が増加するということはありません。中高年は「猫の手」ではないので、「誰でもいい」といったような求人は絶対にないのです。また、景気がよくなったからといって、重ねたのは年齢だけで、企業がほしがる相応の知識やスキルがない人は転職や再就職は難しいということです。

ただし、景気によって年収の相場は変わります。当然よければ上がるし、悪ければ下がります。今は上がっていません。高齢法の影響で定年間近の人たちの年収がひとつの基準になるからです。再雇用の年収は年金との計算方式を元に会社が決めますが、現状で60歳の再雇用で800万円の年収をもらえる人はほとんどいません。私が聞いた一番低い給料は、上場企業で時給1200円。この条件で再雇用をOKする人もいるわけです。

もちろんこれだけしかもらえないなら新たな会社で頑張りたいと会社を飛び出す人もいます。ただはっきりした条件が会社から提示された2007年の夏くらいまでは55〜60歳の人の動きは鈍かったですね。なぜならすごくいいい条件・待遇が提示される可能性もあったわけですから。

───特に求人ニーズが高まっている業界・業種があるわけではない?
柿本

特にはないと思います。今は求人市場は売り手市場で企業は深刻な人材不足にあえいでいます。かつて今後中高年の雇用が増える可能性が高いとか、不況になると「国内でなかなか仕事が見つからない50代は中国や東南アジアに行けば引っ張りだこ」などというマスコミ報道が目につきましたが、それらは実情を踏まえた正確な情報ではないと思います。中国や東南アジアの企業に直接採用されて10年働いて貯金しても、日本に帰ってきてその貯金では暮らしていけないですよ。物価指数が違い過ぎるから。現地に骨を埋めるつもりならいいですけどね。だから求人倍率なども含め、マスコミの報道を鵜呑みにしないで、自分の将来設計を踏まえていろんな角度から考えることが必要だと思います。



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転職者数もそれほど増えてはいない

 
───40代、50代の転職者の数の増減はどうですか?
柿本

基本的に横ばいですが、50歳前後が少なくなってきています。理由は高齢法の影響。かつてのように60歳定年制であれば、企業側もあらかじめ定年で空くポジションの数が分かっていたから欠員補充の必要が生じれば求人をかけられるけど、高齢法が施行されたら定年を間近に迎える社員全員に「こういう条件で再雇用の道があります」と伝えなきゃいけない。そこで再雇用を希望する人がどのくらい出てくるか読めないから求人もかけられない。

働く人の立場から見れば、定年間近の人たちが、今までは「もうすぐ定年だから働けるのはあと少しだな」と考えていたところが「少子高齢化で定年がもっと伸びるかもしれない。65歳くらいまで会社にいられるかもしれない」と思うようになってきた。今までは60歳で会社から追い出されるから、50歳で自分から出て65歳まで働けるところを探す人もいた。しかし高齢法によってそうしなくてもいいかもしれないとなったら、多くの人は転職をしない方がいいかなと思いますよね。こういう両方の思惑で状況が変わってきたのが2007年でした。



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長年ひとつの仕事を継続してきた人は強い

 
───特にニーズが高いのはどういう人ですか?
柿本

日本から海外に流出した産業がたくさんありますが、特に、そういう日本になくなってしまった技術を持っている人は強いです。代表的なものが金型技術です。早い段階でタイや中国に流出してしまったので、日本で金型の専門家は70代でもモテモテです。そういう例はたくさんあります。他にも設計図が残っていないくらいの古い建物の改修工事などの場合、当時の技術が分かっている人間がいないと配線や配管などができない。そういうところに高いニーズがあるんです。

そうでなくても、長い間ひとつのことに取り組んできた技術者はいくつになっても強いですね。技術は過去があって現在があって未来があるわけでしょう。だからその積み重ねがある人は年齢が高くても全く問題ないわけです。逆に言うと、3年や4年ごとに職業を変えている人は難しい。技術の積み重ねには時間が必要ですから、一貫性がないとダメです。

また、指示命令や仕様書を書くだけじゃなくて、実際の設計業務を50歳や55歳になってもやっていたという人は強いと思いますよ。メーカーでは早ければ30代で管理職になれます。もちろん現場を離れて課長、部長と偉くなっていくのはサラリーマンの願望ですが、出世しても実務にも携わっていた人の方が中高年になったときに転職はしやすいと思います。



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自社内の管理仕事だけでは厳しい

 
───では営業や事務職で管理職だけをやっていた人というのは難しいですか?
柿本

最後の仕事が稟議のハンコ押しと会議だけとか、自社内の管理だけでは難しいでしょうね。部下のサポートをしつつ、自分でも何かをしているプレイングマネージャー的な人なら強いです。また、ある業界内ですごい人脈を持っているとか、ある業界や商材についての造詣がものすごく深いとか、何かひとつでも強みがあればOK。営業や事務系職であってもそれがノウハウ・技術ということですからね。

企業も、単なる管理職、マネージャーは欲していません。何を目的に企業は中高年を受け入れるか、自分は何を目的に会社を移るか。そう考えれば、どうするべきかの結論は自ずと出てくると思います。

───他に相談に来る求職者で、求人を紹介するのが難しいという人は?
柿本

「これまで20〜30年仕事はしてきたけれど一貫性がない」という人が一番難しいですね。また、世の中の情勢を考慮せず、他人の意見に耳を貸さず、自分の希望だけを主張する人ですね。世の中において、その業界全体が縮小して、求人がほとんどなくなっているのに、あくまでその仕事がやりたいという人は如何ともしがたいですね。

───相談に来る40〜50代の人の中で、一番多い転職理由は?
柿本

技術者の場合は、ものづくりが好きで技術者になったのに管理職になってしまったから、もう一度技術者に戻りたいという人は多いです。大手企業の場合は35〜40歳で管理職になってしまうので、そこで最初の方向転換を迫られます。また、配置転換や部署異動で、技術職から営業職になった人も多い。人とのコミュニケーションが苦手で機械が好きだった人が営業になってつらい思いをして、もう一回設計開発に戻りたいとかね。要するに「やりたい仕事を続けるために転職したい」という動機が一番多いです。



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必ずしも年収が下がるわけではない

 
───そういったスキルや経験のある人は、希望どおりの会社に転職できますか?
柿本

前職と同一の規模の会社に行くのは難しいです。

───たいてい、年収も下がりますか?
柿本

そんなことはありません。40代の場合、半数は年収が上がっています。40〜50代は家のローンや子供の教育費などに一番お金がかかる時期なので、年収が極端に下がる会社なんて紹介できません。下がるとしても1割が限度でしょう。そのため、個人情報の保護に触れてしまいますが、求職者との面談で、家族構成や住まいは賃貸なのか社宅なのか持ち家なのかまで聞きます。いくら必要なのかを把握した上で企業を紹介しているので。



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人生設計を考えた上で仕事・会社を選ぶべし

 
───これから転職を考えている中高年にアドバイスをお願いします。
柿本

その道のエキスパートであれば何歳になっても仕事はあります。エキスパートの自信がない人は、そうなるために今から行動すればいいと思います。何かを始めるのに遅いということはありませんから。マネージャーであっても実務の方に手を出せる環境を作るなりして、常に自分をブラッシュアップしていけばいいのではないでしょうか。

30代の若手に対しては「自分の将来を見据えた上で、転職を考えましょう」と言いたいですね。60歳の技術顧問がよく言っていたのが「技術者にとって仕事に上位や下位はない。いくつになっても働けるような柔軟性を持つことが大事」ということです。どういうことかというと、技術者にとって、基礎研究が花形と思われる業界もありますが、基礎研究って体力仕事なんですよね。若いうちしかできません。長く働きたいならそれにしがみつくのではなく、35歳をめどに、研究開発から商品開発に変わるとか、営業企画に変わるとか、品質管理、生産管理、製造技術といわれる方面に転換すれば、年齢・体力の変化に合わせていつまでも仕事ができるというわけです。

ITのプログラムや回路の設計なども60歳、70歳まではできないでしょう? だから体力と仕事をうまく噛み合わせる必要がある。一歩立ち止まって次の5年、10年で何をするか、60歳のときにどういう自分になっていたいのかを考えることが肝要です

───ロングスパンで自分の人生設計を考える必要があるということですね。
柿本

人生の局面に応じた動き方というのがありますからね。例えば子供が幼いときには徹夜ばかりの仕事なんてできないでしょう? 人に迷惑かけるわけにはいかないなら、自分が変わっていけばいい。そういう人生設計をいきあたりばったりじゃなくて立ち止まってよく考えたほうがいいと思います。もっと自分を大切にしなきゃダメですよ。ただもっとお金を稼ぎたいからとか、上司がイヤだからとかという理由でポンポン会社を変えるのは、結局自分を大切にしていないことになるんですよね。一時的な感情で流されてはダメです。「自分はこの先、どうなりたいのか」「なぜ転職をしたいのか」を立ち止まってよく考えましょう。

考えてもわからなければ人材バンクを利用するのもひとつの方法です。そのための情報提供やアドバイスができると思いますよ。



 
     
編集部からの転職ポイント
 

ポイント1求人は増加傾向にあるとは言えない

元々中高年の求人は多いわけではなく、景気がよくなったからといって増えるものでもない。よってここ数年で求人数に目立った増加は認められないし、今後も急激にニーズが増えるとも言いがたい。

ポイント2スペシャリストならいくつになっても転職は可能

技術職でも営業・事務職でも、長年の経験で培われた知識やスキルをもっている人ならニーズは高い。逆にキャリアに一貫性がない人や、最後の仕事が実務を伴わない管理職オンリーの人は難しい。

ポイント3ロングスパンで人生設計を考えた上で転職しよう

転職を考える前に、10年後、20年後にどういう自分になっていたいのかをよく考えよう。目先の利益や一時の感情に流されて転職すると後々後悔することになる可能性が高い。


アドバイスをくれたコンサルタント
柿本美代子氏
ハイテク振興センター株式会社
代表取締役社長
柿本美代子氏

旅行会社の法人営業、管理部門全般、無料・有料職業紹介所のコーディネーターを経てハイテク振興センターを設立。コンサルタント歴17年。特に製造業、技術職に強い。「求職者に対してはもっと自分を大切にしましょうと言いたい。そのお手伝いをすることが私の仕事だと思っています」



 
取材・構成/山下久猛
協力/内藤すみこ
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